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February 23, 2007

「それでもボクはやってない」を見た

久々のエントリーです。久々すぎて書き方を忘れていたというおしゃれな事実に我ながら困惑しました。


さて、久しぶりに映画館で映画を見てきました。話題の「それでもボクはやってない」という映画です。ストレートな法廷物らしいので、さぞストレスがたまるに違いないとマゾヒスティックな心境で席に座りました。

しかし予想はいい方向に裏切られました。大変に深刻な問題を扱っていて、大げさな仕掛けやギャグもないにもかかわらず、ほぼノーストレスで、あっという間に終わってしまいました。2時間44分もあるのに。
思うにこれは脚本とカット割りと編集が素晴らしいからでしょう。
この場面がもう少し続くと息が詰まるかな、という寸前で次の場面に切り替わる。深刻な場面でもカットの見事さと乾いたユーモア(ユーモアですよ ええ)で見せてしまう。脚本もいったい何年かけて書いたんだろうと思わせる緻密なものでした。自己主張を抑えに抑えた演出が、監督の静かな怒りをかえって際立たせています。
役者もなかなかよかったと思います。加瀬亮の無力でパッとしない、しかし弱すぎない主人公はすばらしかった。役所広司はじめ脇を固めるベテランも完璧。副検事役の北見敏之、当番弁護士役の田中哲司、裁判官役の正名僕蔵が特に印象に残りました。小日向文世は何でもできるなあ。ダブル山本(耕史・浩司)の競演も見ものです(嘘をつけ)。
映画の見方ってよく知りませんが、なんだかいいものを見せていただいた気がします。

裁判の現実をどの程度再現できているのか、その判断は現場の方のレビューにゆだねたいと思います。ネットにアップされているものをざっと読んだところでは、かなり現実に近いという御意見が見受けられました。
また、映画では私が仄聞してきた司法の問題点もたくさん語られていました。違法な取り調べ、代用監獄問題、自白中心主義、冤罪事件に共通する杜撰な捜査、検察に有利な証拠の扱い、あまりに忙しすぎる不可思議な裁判官、などなど。設定上、どうしても裁判所や捜査機関に対して批判的な描写が多くなってしまうのですが、要所要所でその批判に対する反論が主役側(弁護士側)によってなされるのにも好感を持ちました。

結局のところ、ときに対立してしまう二つの要請、つまり「捜査・裁判の効率化、治安維持」と「被疑者の人権保障」のバランスをいかに取るかということに尽きるんだと思います。「捕まったんだからやってないわけがない」という考えは、きっと大多数の被疑者に当てはまるのでしょう。また、被疑者は嘘をつくものです。いちいちまともに取り合っていては効率の悪いことこの上ない、というのはわからなくはない。だったら、少々「荒っぽいこと」をしてでも罪を認めさせたほうが、結局社会のためにもなる…。

しかし、効率がよいということの裏には、必ず切り捨てられる少数者が存在します。この映画に描かれているのはまさにそれです。真実をいくら叫んでもまともにとりあってもらえず、いい加減な捜査と思い込みの審判によって追い込まれて救いがないという状況。効率と人権のどちらを先に考えるか、という選択があるとして、その答えは好みや立場によって様々だと思います。私は、人権を優先的に考えて、被疑者の人権を抑圧する制度を改めるべきだと考えます。自分が社会的強者だと考えるほどおめでたくはないので、たとえば何かのきっかけで無実の罪を問われることだってないとはいえないと思う。そのことを想像すれば、この結論に行き着く人は多いのではないでしょうか。

そもそも、人権保障と効率化・治安維持は、対立する概念ではないはずです。司法は人権の絶対的な保護と効率化の両立のために、官僚的な現状維持の姿勢にとらわれず、常に改良を重ねていく必要があります。現状では、治安の回復が叫ばれ、世論には手っ取り早い捜査が支持されやすい。また、公判前整理手続きの導入など、運用の仕方によっては効率化と引き換えに誤審を引き起こしかねない制度も実施されています。普段裁判に関心を持つことはない我々も、たまには裁判に目を向けて、うるさくチェックをするべきではないでしょうか。

目撃者を探す被疑者の母や友人、支援者を完全に無視して通り過ぎる群集。私もその中のひとりですが、たまには立ち止まって耳を傾けることも必要かな、と思わせる映画でした。是非ご覧ください。

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Tracked on February 23, 2007 at 09:24 PM

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