イラク人質事件について思うこと
TB:wolfyさん
第一報を聞いて、「まさか今のイラクに一般の日本人が行くこたあないだろう、政府関係者かマスコミか?」と思った。予想に反して、福岡県直方市(大関魁皇の出身地 白星のたびに花火が上がることで有名)の一般人だった。しかも「旅行者」らしい。
マスコミ各社は、朝にはもう直方の彼の実家に張り付いていた。口先では安否を気遣いながら、糾弾する姿勢は明らかだった。彼の経歴や足跡が次々と白日の元に晒される。曰く、制止を振り切ってバグダッド入りした、「自分探しの旅」らしい、どこそこの高校を中退してボクサーを目指していた、云々と。それぞれの情報は明確なベクトルを持って彼とその家族を指して責めている。テレビのコメンテーターも外務大臣も「彼の行動は理解に苦しむ」とはっきり責めるコメントをした。会見した彼の家族はひたすら謝るしかなかった。
なぜ現在生命の危険に晒されている人間をここまで責めることができるのだろう。
確かに彼は軽率だと思う。私ならば彼のようなことは絶対にしない。今のイラクに無防備な状態で入国することは、極寒期に風呂上り素っ裸で外に出るのと同じことかもしれない。しかし、それは「生きる知恵」レベルの話であって、政治レベルの話ではない。
一番の責任はテロリストにある。そして、政府はイラク渡航を禁止していない以上、当然の義務として邦人を救う努力をしなければならない。役人の苦労には確かに頭が下がるが、彼らはそれで給料をもらっているプロであり、ボランティアではない。苦労をかけた本人が謝罪するのは勝手だが、それを傍から強制するべき筋合いではないのである。
渡航を禁止すれば済む話ではあるが、自衛隊を派遣してしまった。日本は民主主義、自由主義国家であるので、海外の自衛隊の活動を知る権利は確保されなければならない。まさか「ちゃんと警備をつけたマスコミ以外渡航禁止」というわけにはいくまい。渡航禁止は難しいのである。このように、政治の効率化と民主主義、自由主義は相反するケースが多い。それを理解した上で民主主義、自由主義を選んでいるのが日本人ではないのだろうか。
アメリカに完全に追従してイラク戦争を肯定し、何の意図があってのことか知らないが自衛隊を派遣したことで、邦人がこのようなテロに遭うリスクは格段に高まったはずである。政府もそれを支持したはずの国民も、そのリスクについては十分理解しているはずである。誤解を恐れずに言えば、税金がいくらかかろうとも、それは甘受するべき事態だ。今回の事件はバグダッドで起きたが、例えばカイロでは起きない事態だろうか。ジャカルタではどうだろう。どこでも起きる可能性があるのではないだろうか。
だとすれば、先ほどの「極寒期に素っ裸」のたとえよりも、「痴漢に遭った女性に対してこんな夜中に歩く方が悪いと責める」くらいのたとえの方が妥当かもしれない。そもそも、テロリストはウィルスではない。人間の行動である以上、なんらかの事情があってテロリストになっているのである。それをウィルス扱いして駆除しようとするからあちこちに無理が出ているのではないだろうか。彼がイラクに渡航したことを激しく責める向きの中にも、テロリストはそこにいて当然、ウィルスのようなものなので責めても仕方がないという感覚がないだろうか。それは相手を人間と認めない排除の論理であり、今回アメリカが繰り返している誤りの根幹である。小泉首相が「自衛隊は撤退しませんよ」と即答したのも、同じ論理で動いているからだろう。交渉する気などハナからないのである。「国民政府を相手にせず」以来の得意技か。
まず責められるべきはテロリストである。そして、つまらん戦争を繰り返して敵を作り出したアメリカ、アメリカに盲従してテロのリスクを拡大する日本政府。テロリストに味を占めさせないためにも、自衛隊の撤退は確かにできないだろう。彼は自分の過ちを生命で償う可能性が高い。彼は愚かかもしれないが、彼が犯した過ちより前三者の罪の方がはるかに大きいことは自明である。
彼に対するバッシングは、強者に媚を売り目をつぶり、反論できない弱者を叩いているに過ぎない。日本人はいつからこんなに残忍で卑屈になってしまったのだろう。


Comments
はじめまして。
何処をたどって来たのか忘れてしまいましたが
多分 イラクの人質問題をたどってたような・・(^_^;)。
そうですね。テロの側を忘れたくは無いですよね。
物事の見る視点が おもしろくて 今後も読ませていただきたいと思ってます。
Posted by: ゆうちん | October 28, 2004 at 03:01 PM
>ゆうちん様 はじめまして。
よろしくお願いします。
トラックバックしてあるのはありがたいんですが、全然趣旨が違う内容だったりして、戸惑います。まあこうして来てくださる方もいることだし、いいかな。
エントリーに書き忘れましたが、まずは何をおいても人質になっている彼の無事を祈りたいと思います。
Posted by: ガメ | October 29, 2004 at 12:03 AM
ども・・・
>トラックバックしてあるのはありがたいんですが、
>全然趣旨が違う内容だったりして、戸惑います
ウチの【記事】に絞ってみれば 同様かな・・と思ったのですが
まぁ 他にも色々あって 特に【トランス】が入ってるから 余計ですよね。(笑)(笑)(笑)
URLは書き込みましたが トラックバックしたつもりは無かったので 適当に削除しといてください。
人質・・24時間過ぎてしまいました。
ほんと 命だけは・・と祈りますね。
Posted by: ゆうちん | October 29, 2004 at 10:51 AM
>ゆうちん様
トラックバック云々はそちらのサイトを指しての書き込みではありませんでした。ゆうちん様の記事は私の記事の趣旨に近いものだと思います。
誤解を招く書き方をして申し訳ありません。
Posted by: ガメ | October 29, 2004 at 11:37 AM
あ~・・
こちらこそ 勘違いしてしまってすみません~。m(_ _)m。
人質・・・
人の命が奪われるという 結果になってしまいましたね。
やりきれないですね。
Posted by: ゆうちん | November 02, 2004 at 09:18 PM
最悪の結果ですね。両親の御心痛はいかばかりかと思うと、たまならい気持ちになります。
皮肉な見方をすると、これで自衛隊員が犠牲になっても、国民に免疫ができていて大した反応が出ないかもしれません。小泉の強運はどこまで続く。
Posted by: ガメ | November 04, 2004 at 02:34 AM
>Wolfy様
はじめまして。
「テロリストはウィルスではない。人間の行動である以上、なんらかの事情があってテロリストになっているのである。それをウィルス扱いして駆除しようとするからあちこちに無理が出ているのではないだろうか」
同感です。テロリストは「ペスト」(害虫)って感じです。アメリカ人らしいです。
ブッシュ:「駆除!駆除!」
仏教の全ての生命を重んずる姿勢・・キリスト教国の人にはありません。
Posted by: ちゃめ | April 20, 2005 at 09:58 PM
ちゃめ様
このエントリーも私が書いたものです。
本文中にも書いてある通り、私は小泉首相も同様の思考をしているのではないか、と思っています。
Posted by: ガメ | April 21, 2005 at 02:43 AM
「アメリカに盲従してテロのリスクを拡大する日本政府。彼は愚かかもしれないが、彼が犯した過ちより前三者の罪の方がはるかに大きいことは自明である。彼に対するバッシングは、強者に媚を売り目をつぶり、反論できない弱者を叩いているに過ぎない。日本人はいつからこんなに残忍で卑屈になってしまったのだろう。」
あまりに美しい文で、泣けてしまいました。まだ日本にもこんな人がいてくれたのが嬉しい!
うわ~ん。
Posted by: ちゃめ | April 21, 2005 at 06:05 AM
恐縮です。
Posted by: ガメ | April 22, 2005 at 03:02 PM